山口地学会

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山口ジオフォトツアー

山口県北部

油谷地域久津の地すべり地形

長門市油谷

山口県北西部に位置する油谷地域には,地すべり地が広く分布している。特に大雨・長雨の際には,珍しい道路標識にあるように「地すべり注意!」である。

写真はそのうちの1つ「久津(くづ)」の地すべり地形である。地すべりとは狭義には斜面全体があまり乱されずに緩慢に移動する斜面変動現象であり,久津では幅300m,斜面長800m,推定地すべり層厚50mをなす。こんな大規模な土塊が本当に動いたのだろうか。地すべり地の最上部に馬蹄形の滑落崖,その前面に中間緩斜面,末端部には油谷湾に舌状をなして押出し地形が発達している。これらの地すべり地形の基本要素がそろっているのが動いた証拠である。

現状で再活動の兆候は認められていない。地質的には,新第三紀層油谷湾層群の砂岩泥岩互層中にすべり面が形成され,上位に玄武岩を載せて移動した地すべりである。地下水,土壌,動植物など豊かな生態系や棚田の景観は,地すべり地形に支えられている。現地踏査を行うと,む~んとした地すべり地独特の露出した土のにおいや草いきれが漂う。地すべり調査にはこうした嗅覚が欠かせない。地すべり地には土砂災害といった災いをもたらす面と実り豊かな棚田など恵みをもたらす面がある。地すべり地形の長期的な発達過程を理解して,地すべりと長くうまくつきあっていきたいものである。

津田秀典(常盤地下工業)

長門市油谷

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