山口ジオフォトツアー
この法面(左側が西)では,下位より下部白亜系の豊西層群の砂岩泥岩互層からなる清末層,灰色細粒砂岩主体の吉母層,および関門層群脇野亜層群の各層境界がみられ,清末・吉母両層の岩相は漸移的で整合関係にある。各層とも全般的に走向はN80~90°Wで逆転層をなして北に48~75°の傾斜を示す。阿内~菊川地域の吉母層は,シルト岩や礫岩を偏在的に挟む石英質砂岩優勢層からなり,この岩相は本地域全域で脇野亜層群の礫岩層に不整合に覆われているが,この法面でも同様の関係がみられる。
この法面は,現在植生に覆われているが,堆積構造が比較的保存されており,豊西層群のサクセッションから湾頭デルタ~バリア島システムの堆積相が推定された。この地点の下位層準から清末植物群を産し,その植物組成はロシア極東の下部白亜系クリュチ層やカプレーエフカ層などの植物群と類似し,より温暖な気候下で生育した豊浦層群最上部のジュラ紀阿内植物群とは組成上の違いを有する。この地点よりも西方の吉母層は,汽水生貝化石層を頻繁に挟むようになり,産出する貝化石群集は,熊本県の川口層のものと酷似するほか,クリュチ層などとの共通種を含む。この法面は下関市阿内伊毛北方に位置し,グリーンロードの阿内トンネル南口を抜け桑ケ市橋を渡り1つ目の法面である。
下関市阿内伊毛