山口ジオフォトツアー
この露頭(左側が東)は,豊ヶ岳(382.1m)の南西を西流する迫ヶ浴川中流の飛瀑・深淵の連なる約0.5kmの渓谷,中山渓(ちゅうざんけい)を流下する滝の1つで“雄滝さま”(落差約5.3m)と呼ばれる。
付近一帯は長門構造帯を構成する後期ペルム紀付加体の秋吉帯に対比されている豊東層群が分布し,主に泥岩,含礫~礫質泥岩および砂岩を主体とし,礫としてチャートなどの珪質岩(径数㎜~数10cm,時に1~5m以上),時に結晶質石灰岩などが認められる。雄滝付近の泥質岩は,半遠洋~遠洋性堆積物の礫を含み,しばしば微褶曲や剪断変形組織が認められることから,メランジュと呼ばれる混在岩の特徴をもつ。
また,泥質岩は石英の細~中礫や雲母などの陸源砕屑物を含むことがあるので,海溝陸側斜面において付加体の一部が重力崩壊して形成された一種のオリストストロームが起源と考えられる。中山渓沿いの地質構造は,概ねN-S~NW-SE走向で東側に約10~60°の傾斜を示し,構造的上位の蓮華帯の泥質片岩の片理面と調和的な構造をなす。
雄滝は,下関市菊川町東中山の木屋川にかかる中山橋をわたり東へ約2kmほどの所に位置する。さらに足を進め,大了寺集落跡付近の東の谷へ入ると豊ヶ岳スラストと称される秋吉帯と蓮華帯との地体構造境界をなす衝上断層がみられる。
下関市菊川町東中山,中山渓