山口地学会

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山口県北部

阿武町惣郷のルーフペンダント

阿武町惣郷のルーフペンダント

惣郷(そうごう)の海岸では,安山岩溶岩とその後に貫入した黒雲母花崗岩との接触関係を直接観察することができる。その関係には,黒雲母花崗岩が急角度で安山岩を貫く場合(ウオール接触)と,低角度で貫く場合(ルーフ接触)がある。ルーフ接触の場合,より新しい黒雲母花崗岩体の上に取り残されている安山岩のような岩体をルーフペンダントという。ルーフペンダントの大きさはさまざまであり,右上の挿入写真にみられるような小さなものから,数kmを超える大きなものまで,変化に富んでいる。

写真左側の黒雲母花崗岩には,ルーフ接触面にほぼ平行な流理構造が認められる。これは花崗岩マグマの流動の痕跡とみなすことができる。すなわち,安山岩溶岩の形成後に,花崗岩マグマがその直下で水平に貫入したことを示している。この海岸露頭は貫入関係だけでなく,白亜紀以降に惣郷地域で起きたいろいろなイベント,例えば侵食作用,断層運動(断層とカタクレーサイトなど)を読み取ることができ,この地域の生い立ちを解き明かす上で重要な情報を記録している(今岡,2010,山口地学会誌,65号,1-6)。

惣郷鉄橋の下から海岸線沿いを北側に10分程度歩くと,目的地にたどりつくことができる。足場も良くないことから,天候の悪い日は避けた方が無難である。

今岡照喜(山口大理工学研究科)

阿武郡阿武町惣郷の海岸露頭

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