山口ジオフォトツアー
長門峡入口に架かる洗心橋の上から北を眺めると、南西から流れてくる篠目川河床に、岩盤が広く露出しているのが目に入る。この河床露頭は、後期白亜紀の阿武層群嘉年(かね)層に属する流紋岩質溶結凝灰岩であり、右上から左下(NE-SE方向)に幅1~2mで溝状の凹地が発達する。
この凹地は、地下深部で形成されたカタクレーサイト帯に相当する。凹地の両側を区切る垂直な断層面に沿って幅数㎝の青灰色断層ガウジ帯が発達する。断層面には水平な条線が認められる。カタクレーサイト帯中には、断層運動センスを知る手掛かりとなる複合面構造(P-フォリエ―ションやリーデルシア)が確認される。
これら複合面構造から、断層運動が左横ずれから右横ずれへ反転したことが読み取れる。断層周辺の凝灰岩では断裂の発達が著しく、断層形成に関わったプロセスゾーンを認めることができる。断層から離れるにつれて、断裂の間隔が広くなっていく。露頭の北端で、篠目川は阿武川と合流し、丁字状の河川パターンを形作っている。河床露頭に現れた断層は、山口市阿東徳佐から篠目にかけてNE-SW方向に延び徳佐―地福断層(長さ約35km)である。
山口市阿東長門峡