山口ジオフォトツアー
秋穂(あいお)半島の基部にひときわ目につく山塊がある。それは火ノ山連峰である。山口県セミナーパークの裏山と言ったほうが,よくわかるかもしれない。火ノ山連峰は,陶岳(すえがだけ),火ノ山,亀山など数個の岩峰が南北に連なっており,山登りやロッククライミングの練習場としても親しまれている。
火ノ山連峰は標高300mあまりの低山であるが,稜線部分が際立って突出している。一方,山麓には緩傾斜面がよく発達しており,中腹から山麓にかけて斜面傾斜が急に緩くなるところ(遷緩(せんかん)点)がある。この遷緩点は地形図上でも明瞭に読み取ることができる。実はこの遷緩点が地質の境界になっているのである。
山麓側は粒の粗い石英,長石,黒雲母などからできた粗粒花崗岩(後期白亜紀の広島花崗岩類)からできており,岩体には全体として細かい節理が発達している。そのため,節理に沿って風化作用が深層まで及び,岩体がマサ化してしまい,雨水によって容易に除去されることになる。これに対して,中腹から山頂にかけては粒の細かい花崗岩からできており,また節理の発達も粗粒花崗岩に比べて悪いために,風化しにくく,深層風化をあまり受けていない。このように,岩石の粒度や節理密度に関係して,風化・侵食に対する抵抗力の違いがあるために,細粒花崗岩体の部分が突出しているものと考えられる。
山口市秋穂半島基部