山口ジオフォトツアー
周防大島町東安下庄(ひがしあげのしょう)の海岸に,雄立岩(おたていわ)と雌立岩(めたていわ)と呼ばれる一対の岩塔が見られる。写真は背の高い方の雄立岩である。この近くには立岩海水浴場があり,毎年多くの海水浴客でにぎわっている。
立岩は瀬戸内火山岩に属する高(こう)マグネシア安山岩からできている。瀬戸内火山岩は,新第三紀中新世の中頃(約1300万年前)に瀬戸内地域を中心にして起こった火山活動によって形成された岩石の総称で,高マグネシア安山岩と呼ばれる特異な組成の岩石を産することで有名である。この安山岩はマグネシウムを多く含み,その含有量は玄武岩中のそれと同じかそれ以上であることを特徴としている。高マグネシア安山岩をつくったマグマは,スラブ(沈み込んだ海洋プレート)の上面を構成していた堆積物(泥岩や砂岩)の部分融解によって生じた流紋岩質マグマがマントルを上昇する過程でマントル物質と反応して形成されたと考えられている。
白木(1991)によると,立岩の高マグネシア安山岩は岩型的にはかんらん石複輝石安山岩であり,ほぼ東西方向にのびる岩脈として産する。岩脈の母岩は中生代白亜紀領家新期花崗岩類の東和花崗閃緑岩であり,それに由来する石英や長石の捕獲結晶が安山岩中に含まれている。立岩は,周囲の花崗閃緑岩に比べて緻密で硬く,風化・侵食に対する抵抗力が強いために,このような岩塔として残ったものと思われる。
周防大島町東安下庄