山口ジオフォトツアー
瀬戸内海で有数の鯛の漁場として知られる大畠瀬戸。ここに架かる大島大橋の渦潮を眼下に眺めたあと,目を上げれば周防(すおう)大島町の玄関口にお椀をかぶせたような「飯の山(いいのやま)」(263.5m)が正面に見える。飯の山は,標高190m(右稜線の遷緩(せんかん)点付近)までは中生代白亜紀領家古期花崗岩類の片麻状花崗閃緑岩,それより上部は新生代第三紀中新世の火山活動による安山岩類からなる。このように,山腹斜面の勾配に明らかな違いが現れるのは,標高の低い部分に分布する花崗閃緑岩が風化によってマサ状になっているのに対し,安山岩類は板状節理がみられる硬質岩が多いことから急傾斜でも斜面の安定が保たれるためである。飯の山のほかに,同じ周防大島の嘉納山(かのうざん),頂海山(ちょうかいざん),嵩山(だけさん)をはじめ,上関(かみのせき)半島や島嶼(とうしょ)などにも共通した特徴をもつ安山岩類が広範囲に分布し,それらは瀬戸内火山岩と呼ばれる。
大島大橋は,橋長1020mの3径間連続トラス橋で,主要橋脚部は多柱式基礎からなる。トラス型式と多柱基礎が選定されたのは,地形,地質,海流(最大潮流10ノット),環境,そしてコスト面などから決定されたもので,ここでえられた経験と成果はその後の本四架橋建設に生かされている。
周防大島町